数々の傑作ドラマを手掛け、2023年11月29日に惜しくも逝去された名脚本家、山田太一さんが、第1回山本周五郎賞を受賞した「異人たちとの夏」。1988年に大林宣彦監督が映画化、2003年には英訳が出版され、国内外の読者に広く愛されるこの傑作小説が、『さざなみ』『荒野にて』の英国人監督アンドリュー・ヘイの手で新たに映画化された。
ロンドンのタワーマンションで暮らすアダムは、12歳の時に交通事故で両親を亡くした40代の脚本家。それ以来、孤独な人生を歩んできた彼は、在りし日の両親の思い出に基づく脚本に取り組んでいる。そして幼少期を過ごした郊外の家を訪ねると、そこには30年前に他界した父と母が当時のままの姿で住んでいた。その後、アダムは足繁く実家に通って心満たされるひとときに浸る一方、同じマンションの住人である謎めいた青年ハリーと恋に落ちていく。しかし、その夢のような愛おしい日々は永遠には続かなかった......。
主人公と死別した両親との交流、ミステリアスな隣人との恋の行方を描くこの幻想譚は、愛と孤独、喪失と再生、さらにはセクシュアリティーといった根源的なテーマを探求し、観客それぞれの心の奥底にある記憶や郷愁を呼び覚ましていく。また、琥珀色の光がきらめく35mmフィルムの映像美は、観る者をリアルとファンタジーの狭間へと誘い、幽玄にして心震わす映画体験をもたらす。
「Fleabag フリーバッグ」のアンドリュー・スコット、『aftersun/アフターサン』で米アカデミー賞男優賞にノミネートされたポール・メスカル、『リトル・ダンサー』のジェイミー・ベル、『ウーマン・トーキング 私たちの選択』のクレア・フォイという実力派キャストが結集。米テルライド映画祭でワールドプレミアされるや批評家がこぞって絶賛している本作は、『ノマドランド』などで米アカデミー賞作品賞に5度輝いたサーチライト・ピクチャーズが全世界に配給。本年度の賞レースでもスポットライトを浴びることが有力視されている。
孤独には耐えられない。たとえ、
甘えたい相手が死者たち「異人たち」だとしても。
異人である母親役を演じたこと、
イギリスヴァージョンと重ねて感慨ひとしお、でした。
♦️異人たちとの夏♦️山田太一さんの原作を
大林宣彦監督とは違った視点から描いた作品
35年を経て 新たな作品として甦った‼️
みんなの人生に当てはまる
大切なことが心に強く残る。
そして愛おしい家族と今まで以上に
向き合うことを決心しました。
光がある分影があり、山がある分谷がある。
どんな物語になっても、それが重なり、紡ぎ合い、それこそが、
人生になってゆくのだなあと思わせられる作品でした。
どうしても必要だったのだと響いた。
死は生を豊かにし、生者のために存在する、
原作者の真髄をやっと覗けた気分。
愛と死を覚える人間の心の襞の奥を
とても丁寧になぞらえている。
まさに「異世界転生」。
名作『異人たちとの夏』を、
イギリスのリメイク作品が
超えるなんて。山田太一先生の魂は引き継がれた。
原作『異人たちとの夏』は山田太一が浅草木馬館で
お父さんに似た人を見かけたことから始まった。
アンドリュー・ヘイは太一先生を発見し、
奇跡の連鎖がこの名作を生んだ。
こんなにも多彩に表現する映画は初めてでした。
クィアに限らず人間なら誰しも抱えている孤独感や
痛みに気付ける優しくて、さみしい映画で大好きです。
※順不同・敬称略