その壱 解説の間 時代背景

長らく続いた戦乱の世に終止符を打ち、天下を統一した太閤。
しかし、側室・落葉の方との間にできた世継ぎの八重千代がまだ幼いうちに、太閤は死の床についてしまう。そこで太閤は5人の有力大名を「五大老」に任命し、八重千代が元服して新しい統治者となるまで、合議制で政治を行うように取り決めた。
各地を治めていた大名たちが、それぞれの領地で権勢を震っていた時代である。「五大老」は日本を割ることなく平和を維持するためのものだったが、太閤亡き後の1600年。五大老の中での確執が表面化し、筆頭格である石堂和成と杉山・木山・大野ら他の五大老は一致団結し、関東領主である吉井虎永の権勢を奪わんと大坂城に呼び出した。
孤立無縁となった虎永は、敵の包囲網が迫る中、石堂らと対峙することを決意する。

その壱 解説の間 時代背景

「カトリック」とプロテスタントの対立

日本が戦国時代であった頃のヨーロッパでは、ルターによって切り開かれた宗教改革により、聖書の教えを中心とする新しい教派「プロテスタント」が台頭し、「カトリック」との対立が激化していた。
ポルトガルとスペインは、プロテスタントでエリザベス1世が統治するイギリスに対してカトリックの勢力を堅持しようと戦争を繰り広げていた。同じくプロテスタントで、宗主国のスペインと独立戦争を行ったオランダは、イギリスとの共通点を見出し、共同航海を行うようになる。
カトリックの宣教師らは、急激に勢いを増すプロテスタントに対抗し、カトリック教会を立て直そうとイエズス会を創設し、ローマ教皇の許可を得て、アジアやアフリカの諸外国に進出していく。

日本を目指すヨーロッパ諸国

新航路の開拓によってヨーロッパ各国が海外進出を行うようになり、世に言う大航海時代が始まった。その先頭に立った国がスペインとポルトガルである。
彼らはアジアでも航路を開拓し、最東端の日本にも目をつけた。マカオを拠点としたポルトガル商人たちは、当時日本で生産されていなかった生糸を中国から日本に運び、代わりに日本の銀と交換する貿易を始めて莫大な利益を上げた。当時の日本は石見銀山などを有し、世界有数の銀の産出国であったため、ヨーロッパの有力国は、その銀を欲して日本との交易を目指すことになった。
また、ヨーロッパで巻き起こった宗教改革で劣勢に立たされたカトリックのイエズス会が、キリスト教が広まっていないアジア諸国へ進出し、日本もそのターゲットとなった。しかし、彼らには、純粋な布教だけではない裏の目的があったー。

その壱 解説の間 時代背景

仏教と日本固有の神道が文化的慣習として根づいていた日本に、カトリック教会の修道会であるイエズス会が来日し、キリスト教の布教が始まったのが群雄割拠の戦国時代。宣教師たちは、各地で衝突や迫害に遭いながらも、南蛮貿易の利益を訴えて時の権力者や一部の大名たちの庇護を受け、領内の布教許可を得て、信者を増やしていった。
当初の大名たちの関心はもっぱら、南蛮貿易の利益や武器・弾薬の獲得だったが、やがてキリスト教の教義そのものを信奉し、大名の中でも洗礼を受けるものが現れた。
本作でも、五大老のうち2人の大名が「キリシタン大名」として描かれている。